駒つなぎの桜
松本城の天守が完成した頃、加藤清正が江戸からの帰りに立ち寄りました。築城者、石川康長は清正をもてなし、帰る時には土産として選りすぐりの名馬を二頭連れてきて、そのうちの一頭を差し上げますと伝えました。すると清正は「あなたほどの目利きが選んだ馬をどうして私が選ぶことができましょうや」と言い、二頭とも連れて帰ってしまいました。
一頭を良い馬として選べば一方は駄馬ということになります。また悪い馬を選べば清正は見る目が無かったと人々に笑われるかもしれません。二頭とも連れ帰ることでそれを避けることができ、これを聞いた人々は「さすが清正公」と大いに感心したということです。この話は江戸時代に書かれた『続撰清正記』にのっています。