松本城伝説

梁をのばした匠伝説

松本城天守工事の真っ最中、一人の大工が工事の場に来ました。しかし、これという仕事もせず、ときおりせん(木と木をつなぐために打ち込む木片)を削っているばかりでした。

工事も進み、いよいよ天守組み立てとなり、大事なはり(屋根を支え柱と柱を固定する木)を上げるときになりました。ところが、どうしたことか5寸(約15cm)短いのです。

組み立ても中止され、みな青くなってぼう然としていました。その様子をみて、「わしがのばしてみよう。」といい、総勢100人の大工を東西2組に分け、梁の両端に縄を結ばせ、両方に引かせました。自分は棟木むなぎの真ん中に仁王立ちになり、頃合いをみて、大きな木槌きづちで梁を1回、2回、3回と力を込めてたたきました。そして、大工は木槌を置いていいました。「これでちょうど寸法分がのびたぞ。」

確かめると、まさに5寸分のびていました。みなしたいて、その神技とも思えるできごとに驚きました。こうして組み立ても無事終わり、この大工はみなから、名人として大いに尊敬されたそうです。